理想の恋人って!?
 そんなことを思っているうちに、選手たちが挨拶を終え、ベンチへと戻って来始めた。晃一はその後方にいて、ほかの選手の肩を叩きながら笑っている。

「お疲れ様です」

 マネージャーの三人がせっせとタオルやドリンクを手渡している。晃一がタオルで汗を拭きながら私をチラリと見て、バツの悪そうな笑みを浮かべた。

 きっと後半の強引なボール運びを思ってのことだろう。

 私は小さく笑って首を振った。私はサッカーの監督でもないし、とくに詳しいわけじゃないけれど、残り時間の少ない中、積極的に攻めようとした姿勢はよかったんじゃないかな。そんな気持ちを伝えるためのジェスチャーだ。

 晃一がありがとう、と声に出さずに唇を動かし、にこっと笑った。日に焼けた肌、額に光る汗、乱れた髪、上気した頬、逞しくしなやかな体躯、長い手脚、そのすべてに目が引きつけられる。

 晃一は小さく片手をあげて、ほかの選手たちとともに監督の前に集まった。しばらく監督の話を聞いてから、選手たちは更衣室へと引き上げていく。晃一はその流れと逆行して、私に近づいてきた。

「お疲れ様」

 声をかけると、また晃一が笑った。
< 91 / 119 >

この作品をシェア

pagetop