理想の恋人って!?
「ありがとう。ずっと観ててくれたんだ」
「うん。晃一の言った通り、目が離せなかったよ」

 目が離せなかったのは、試合が盛り上がったからではなく、晃一のせいなんだけど、でもそれは言わない。

「この後、仲のいい連中と反省会と称して飲みに行くんだけど、明梨もおいでよ」

 晃一が首に掛けたタオルで髪を乱暴に拭きながら言った。

 私は、行く、と答えそうになって思いとどまった。そもそもこの試合観戦は、昨日のデートの延長、つまりおまけのようなものなのだ。次の約束をするところまでが晃一の理想のデートだったのなら、その約束を果たした今、もう偽りのデートはおしまいのはず。こんなふうに私との偽物の関係を引き伸ばそうとする理由がわからない。それに……引き伸ばされても、それが偽物だとわかっているから……胸が痛む。

「せっかくだけど遠慮しておく。私、初めて来たし、何より部外者だし」
「みんな彼女とか友達連れてくるし、明梨がいても変じゃないよ」
「そうじゃなくて……」

 やんわりと断ろうとしたのに、それは通じなかったみたいだ。

 私は体の前で両手を握って、晃一を見上げた。
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