理想の恋人って!?

「もうこういうの、やめようよ。美佳たちにのせられた理想のデートは終わったんだし、私たちはもう理想の恋人同士でも何でもないでしょ。だから、行かない」

　晃一が何か言おうと口を開きかけたとき、彼の背後からマネージャーの千春さんが声をかけてきた。

「吉沢くん、何してるの？　もうみんな着替えに行ってるよ」
「すぐ行くよ」

　晃一が振り返って言った。再び私の方を見た彼に、私は促すように言う。

「そろそろ行けば？」
「そうだな……。来てくれてありがとう。本当に嬉しかった」
「晃一のがんばってる姿が見られてよかったよ」
「明梨のがんばってる姿も見たいな。今度、ラクロスの練習、見に行ってもいい？」
「え？」

　偽りの関係は続けたくないって伝えたつもりだったのに。困惑する私を、晃一が少し首を傾げて見る。

「ダメかな？」
「ダ、ダメじゃないけど、でも、練習中は私、人格変わってるよ」

　私の言葉に晃一がふっと笑った。

「どんな明梨でも明梨だと思うけど」

　そのとき痺れを切らしたのか、千春さんが近づいてきた。

「ねえ、吉沢くんってば。早く着替えてきてよね」