理想の恋人って!?

　彼女に咎めるように声をかけられ、晃一が小さく舌を出した。

「そろそろ行くよ」
「うん」

　晃一が片手を小さくあげて私に背を向けた。千春さんの横に並んだとき、彼女が促すように晃一の背中に触れた。その瞬間、胸がギュッと苦しくなる。

「ピッチに残ってるの、もう吉沢くんだけなんだからね」

　千春さんに言われて、晃一があわてたように更衣室へと走っていく。

　晃一の背中を見送っていた千春さんがくるりと振り返ったので、私とばっちり目が合ってしまった。急に逸らすのもわざとらしいよね、と思っているうちに、彼女が私に近づいてきた。

「こんにちは」
「あ、こんにちは」
「私、サッカー部のマネージャーの市川(いちかわ)千春と言います。あなたは？」

　千春さんが挑むような目つきで問いかけてきた。

「えっと、管理栄養学部三回生の藤崎(ふじさき)明梨です」
「吉沢くんとはどういう関係なんですか？」
「どういうって……？」

　いきなり何を訊くんだろう、と戸惑っている隙に、千春さんが言う。

「学部も違うのに、なんで吉沢くんのことを知ってるんですか!?」