汝は人狼なりや？（※修正中。順を追って公開していきます）

「私も……それがいいと思います」


　なんて言葉を返したらいいのか分からずにいると、黒月くんの隣の席の……僕の憧れの女子生徒、夜桜 愛奈(よざくら まな)さんが言う。

　今までとは違う意味で、身体がビクッと震えてしまう。

　腰くらいまで長さのある黒色のロングヘアーに、くりくりとした大きな黒色の瞳。夜桜さんはとても綺麗で、心優しい人。大上さんも綺麗な人だけど、また違った意味での綺麗さを持っている彼女に、僕は惹かれたんだ。


「えっ、あ、そ、そう、だね。誰もいないところで、泣いてみるよ」


　他のクラスメートとは違い、言葉がしどろもどろになってしまう自分が情けない。

　これが狼谷くんが相手なら、間違いなくけらけらと笑われるだろうに……夜桜さんは、「それがいいですよ」と優しく微笑んでくれた。

　ふと、何気なく黒月くんの方に視線を戻すと、彼は少しムッとして……──んっ？

　見たこともない黒月くんの表情に、僕はその場で固まってしまった。

　黒月くん、怒ってるの……？
　どうして？　僕が夜桜さんと会話をしたから？

　……あっ、もしかして、黒月くんがずっと誰からの告白も断っていたのって、夜桜さんのことが好きだから？

　それなら納得せざるをえない。もしも２人が付き合ったら美男美女のカップルだし、その時、僕は……ちゃんと笑って祝福してあげなくちゃ。

　僕みたいなヘタレな男が、夜桜さんと釣り合わないことなんて……当の昔に知っていることだから。


「黒月くん、夜桜さん」


　名前を呼ぶと、黒月くんはハッとして、いつもの穏やかな表情を浮かべた。


「ん？　なぁに？　大和くん」

「２人とも、そう言ってくれてありがとう。正直、僕は……風子が人狼に殺されてしまったことが、未だに信じられないんだ。受け入れたくない現実っていうか……」