汝は人狼なりや？（※修正中。順を追って公開していきます）

　案の定、ドアノブをいくら横に捻ろうともガチャガチャという音が鳴るだけで、その扉が開くことはなかった。


「あれ？　あれ……っ？」


　それでも明智さんはドアノブを横に捻ろうと手首を回す。次第に、涙を零しながら何度もドアをドンドンと叩き、助けを呼ぶ声を出した。「だれかー！」「たすけてー！」と。……しかし、やはり扉は開かなかったし、外からはなんの応答もなかった。


「夕里ちゃん。落ち着いて。いくらやっても、無駄だよ」


　一向におさまらない様子に見兼ねた大上さんが、明智さんの肩にそっと手を置き、制止する。自分が何をやってもここからは出られないのだと理解した明智さんは、本格的に泣き出してしまった。

　しんと静まり返った部屋の中で、明智さんの泣き声だけが切なく響く。


「──あのさ、」


　その泣き声を打ち消すかのように、恐る恐る声を発したのは、右手をあげて割り込むようなポーズを取る火神くんだった。


「聞きづらいんだけどよ……。このまま何もせずにいるのもアレだから、ハッキリさせたいんだけど。その……この中に、人狼っているのか……な？」


　苦笑いを浮かべながら質問を投げ掛けてきた火神くんの額には、じんわりと汗が滲み出ている。


　──人狼。

　この現代社会に紛れ込んだ、人の形をした人じゃない生き物。どこからやってきたのか、何が目的なのか分からない凶暴な生き物。

　分かっているのは、狼男のように姿を変え、人の血肉を食らうということくらいだろうか。

　そのあまりにも残虐で非道な彼らの名称──〝人狼〟という言葉を聞いただけで、恐怖のあまりに泣き出す人々がいるほどだ。

　そんな彼らが、このクラスメートの中に紛れ込んでいるだなんて、やっぱり到底思えない。信じられない……。