汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
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「おい、野々宮!自分が今、何をしているのか分かっているのか? そいつは……人狼なんだぞ?!」


 由良城さんによって真っ二つに切り裂かれた鉄の棒を握り締めたままの火神くんが、訴えるように叫ぶ。

 自分は今、由良城さんに殺されかけた。野々宮くんが間に入ってくれなかったら、間違いなく殺されていた。それを差し置いても、たった今、如月さんは喰い殺されてしまった。それなのに、それらの原因である由良城さん側につくとは何事か?

 ……火神くんの必死な訴えからは、そういう意図が読み取れた。

 どうして野々宮くんがそういう行動を起こしたのかは僕も分からないけれど、やっぱり、野々宮くんと由良城さんの間にある絆の大きさや信頼度が関係しているのかな……?

 火神くんの訴えを聞いた野々宮くんは、キッと鋭い目付きで彼のことを睨んだあと、一際大きな声で叫んだ。


「だからなんだっていうんだ……!!!」

「っ?!」


 普段は聞かない野々宮くんの声量の大きさに、火神くんはたじろぐ。


「慧が人狼……? そんなこと、俺からすればどうだっていい!小さい頃からずっと慧と一緒だったんだ。ずっと、慧のことを見てきたんだ!人間であろうと人狼であろうと、慧は、慧だ……!!!」


 ──刹那、由良城さんの垂れ下がった耳がピンと立つ。同時にその身体を野々宮くんの腕の中でカタカタと震わせ、浅い呼吸を繰り返していた。

 野々宮くんの言葉に、何か胸を打つものがあったのかもしれない。なんにせよ、起こしてしまった出来事はもう起こす前には戻せないし、こんなにも感情的に声を荒げる野々宮くんを見るのは、初めてだ。
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