汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
「野々宮……。お前、自分が何を言っているのか、分かって……?」

「ああ、分かっている。人狼であろうと、違う種族であろうと、俺は、慧のことが好きだから……っ!」

「っ!」


 由良城さんの肩が、一際大きくビクリと震えた。目を見開いたまま、まるで、息をすることさえ忘れているかのような。

 はたして、この状況で自分の想いを明かす人が現れるだなんて、誰が想像していたんだろう……?

 そりゃあ、野々宮くんと由良城さんはずっと一緒にいて、周りの人から囃し立てられてもお互いが認め合わないだけで、ふたりは両想いなんだろうとはみんな気が付いていた。

 むしろ、ふたりはいつ結ばれ、恋人同士になるんだろう?──って。いつ恋人同士になってもおかしくないのにな、って。少なくとも僕は、そう思っていたのに。

 こんな意味も分からないゲームの最中に。如月さんが、他の誰でもない実は人狼だった由良城さんに食い殺されたあとに。

 その想い自体も、それを伝えることも、すごく重要なことなのに、どうして。どうして、それが〝今〟なの?野々宮くん……由良城さん……。


「っごめんなさい……!!!」


 しばしの沈黙のあと、由良城さんはみんなの重い沈黙に耐えられなくなったのか、みるみると目に溜まっていった涙をぼろぼろと溢れ出しながら、顔を覆うようにしてしゃがみ込んだ。

 決して、涙そのものを流す生き物は少なくない。目に入った汚れなどを洗い流すためだと、前に本で読んだことがある。けれど、〝感情のままに涙を流す生き物〟としたならば、それはきっと多くないだろう。人間くらいなんじゃないかと、僕は思う。
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