汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 由良城さんの顔に一瞬見えたそれは、人間が流す涙と同じ無色透明そのものの涙の色で、人狼も人間と同じように〝感情のままに涙を流す生き物〟だというのか。


「さとり……?」

「みんな、聡志、ごめんなさいっ!私、生まれた時から人狼で……!今まで、ずっと!人狼として、生きてきた……っ!!!」


 由良城さんの必死の謝罪。告白。

 泣き叫びながら謝罪する由良城さんのことを、周りのみんなは、ただただ無言で見つめている。由良城さんの境遇を憐れむ瞳もあれば、それでも彼女が犯した罪を許すわけがないという怒りに満ち溢れた瞳もある。


「うん。知っていたよ、慧」


 野々宮くんの言うその〝知っていた〟は、〝彼女の正体が人狼だった〟ことについて……?

 もしもそうなら、それは一体いつから?どこから?──まさか、最初から……?僕がふたりと知り合うより前の、幼い頃からなのかもしれない。

 けれど、泣きながら自分の私情を明かす由良城さんを見つめる野々宮くんの瞳を見ていると、僕の推測は合っているのかも……と思う。それほどまでに優しくて、あたたかみを帯びている瞳をしていた。


「私は……私は……!人狼の本能に抗えず、沙彩ちゃんを食い殺してしまった!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「慧……」

「いくら謝ったって、許してもらえないことをしてしまったのは分かっている!取り返しのつかないことをしてしまったのは、分かっているの……!ああ、ごめんなさいぃっ!」


 彼女がこんなにも取り乱すように泣き叫ぶ姿は、初めて見た。その姿からは、嘘偽りは感じられない。心の底から謝っているのだと思える。

 でも、今さっき目の前で起きたことは紛れもない事実で、過ぎ去ってしまったことは、もう……どうしようもない。ぶつけようのないこの感情のやり場を、僕は知らない。
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