嘘つきシンデレラガールと二人の偽王子!?
定時になり、自分たちの文の仕事を終えた人達がパソコンの電源を落とす中、私も給湯室に置いていた洗ったお弁当箱を取りにいって帰ろうと浮足立つ。
私も紡さんみたいに最近、部屋が少しずつ荒れてきた気がする。
雨が降るか降らないか分からないから、洗濯物がずっと中に干しっぱなしの時点で、見た目は綺麗じゃない。
「おい、お前、もう上がるのか」
ひょいっと給湯室を覗いてきた新さんが明るい声で話しかけてきた。
これは間違いなく裏があるぞ。
「いやあ、少し事務に寄りますから、まだ」
「お前、兄貴の婚約者なら部屋を片付けに来い。本当に呆れる。ガツンと言え」
「いや、本当に今日はちょっと」
「カフェで夕食をテイクアウトして下で待っとくから、すぐに来いよ」
有無も言わさずにそう言われ、呆気にとられていた時にはもうエレベーターに向かってしまった後だった。
絶対に、家に行って帰って来る時は終電が無いんですけど。
せめて休日にしてくれなきゃ。お財布の中を覗き溜息しか出ない。
帰りのタクシー代が痛い。
正直にソレを言って帰ってしまおう。
事務に向かいながら、作戦を考えようにも正直に言う事以外思いつかなかった。
「あ、いたわ。事務の人」