嘘つきシンデレラガールと二人の偽王子!?
「おい」
その低い声が怖くて身体が固まった。
「あの、すいません。でも、そのクリーニング代とかは」
こんな金持ちしか来なさそうなバーで。
ちょっとドアで足をぶつけたぐらいでも云万円のクリーニング代が飛びそうで、委縮してしまう。
「は? 口紅が思い切りはみ出してるって言ってるんだが?」
「あ、あははは、リップですか。そうですか、それはどうもありがとうございます……」
なるべく顔も合わさないように、壁に沿って蟹の様に逃げていると、まだ手を離そうとしない。
「ああ、アンタもしかして二階でやってる合コンのメンバー?」
「ち、違います。滅相もないで、す」
「雰囲気で分かるけど? ほら、口紅もちょっと濃すぎるから、馴染ませてやるよ」
「へ――?」
強引に顎を上へ持ち上げられると、――男の人の顔が近づいてきた。
黒い髪の、息も止まるような綺麗なブラウンの双眸が私を捉える。
薄く開いた口が、端でにやりと笑う。
「い、いやっ」