鏡の中
やっと静けさが戻ったとき、気の弱そうな委員長と思われる女性が立っていた。
そして、申し訳なさそうに、志と、志が持っている鏡とを交互に見ながらしゃべりだした。
「あの…。ここ施錠したいんですけど…。あの…」
とてもいいにくそうだったので、志は笑った。
「少しここにいさせてもらえる?」
彼女は恥ずかしそうにうなずいた。
そしてまた、申し訳なさそうに口を開く。
「でも…」
そして鍵を持っている自分の手に視線を落とす。
また志は笑った。
「いいよ。俺が鍵をかけておくよ。投げて。」
ちょっと驚いた顔をした彼女は、すたすたと歩み寄り、お願いしますと一言残して鍵を志に渡した。
こんな風に学校内でやさしく誰かに話しかけたのは…何年ぶりだろう。
そう、本心で。
そしてやさしく話しかけてくれたのは…いつぶりなんだろう。
そんなことを志は考えた。