鏡の中

不安






那を信じられない自分が黒く思えて、とてつもなくいやになった。


逃げ出したくなった。




なんでもないよ、と那を抱きしめて安心させてあげたいのに…無理だった。





志は一言ぽつりと吐いた。



「那のこと…信じていいんだよな?」


そして答えを待たぬままその場を離れた。




ドライヤーはそのままで。






そのドライヤーは、2人の心にあいた穴を広げる強い強い風のようだった。






< 112 / 142 >

この作品をシェア

pagetop