鏡の中
でも嫌じゃなかった。
本当は誰とだって、ちくちくと悩ましい関係を続けていたいのではなく、些細なことで笑ったり一緒に馬鹿なことしたいんだ。
志は少しうつむいた。
そして手元にあった鏡に目を落とす。
(なんでこんなの持ってんだ?)
そのまま、誰かが見える場所に置き直せばよかった。
職員室に届けたってよかったんだ。
でもなぜかそれを持ったまま、図書室に来た。
少しだけ不思議な気持ちになった。
なんとなく、あけてみた。
踏んだことを思い出して、少し身構えたが、それは割れていなかった。
不思議なほど綺麗だったんだ。
そして自分の野暮ったい顔が映る。
ふっーと息を吐き、鏡をとじた。
次の瞬間には、目がくらむようなまばゆい場所を必死で走っている自分がいた。