鏡の中
cinq
抱擁の奥
那はその後の記憶がまったくなくなった。
目が覚めると、どうやら自分の部屋で寝てたんだってことに気づいて。
記憶をたどって志のことを思い出して、慌てて1階に降りていって、出かけようとする。
でも…最近ずっと履いていたお気に入りのハイヒールが折れてた。
まるで自分のようだと気づいたときには、行く気がうせてた。
もう一度自分の部屋に戻ってみる。
今までと変わらないはずなのに、どうしてこうもすべて違うものに見えてしまうんだろう。
それほど…志の存在は大きかった。