鏡の中





夏以来、志だってそのことには触れていなかった。


那の口から男の名が出てたなんて、口が裂けても言わなかった。




でも、夢だからって言ってみた。







「…志しっかりしてよー夢だよ?嫉妬?」


可愛いなあって那が志を小突くと、志はだよなって切なげに微笑んだ。




心臓の音が志に聞こえるんじゃないかって気が気じゃなかった。





「それだけじゃねーんだわ。那が泣いてるからさ、嫌々なんだろうな。一人に抱かれてる映像もあれば、複数もあんだわ。もー俺嫉妬で狂いそう。」


豪快に志は笑ってたけど、でも…


那は…





笑えなかった。






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