鏡の中




仲直りしてから、確かにうまくいってた。


…うまく取り繕ってた。



お互い必要だから、失いたくない。



だから核心には触れずに、遠くをなでるように愛し合った。




でも不安というのは簡単にぬぐいされるようなものではない。






那が、志以外の男の名前を寝言でつぶやいたこと。

そして…すれ違いの後、志が那に触れた時の震え。


一度は崩れたものが、もう一度戻ることはない。





違う形として、形成しなおすことならできる。







志は志ではなく



那は那でない状態






そんな状態だからこそ、うまくいってた。







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