鏡の中





眠れない夜があっても、明けてゆく夜を止めることはできない。




「はあ…」


結局まどろむことも許されず、志は朝を迎えた。





目をこすりながら、パンをトースターに放り込む。



震えは止まったけど、目を閉じると瞼の裏に焼き付いている二つの出来事が、怖くて怖くてたまらなかった。





んーという伸びの声のあとに

「おはよ、ゆっきー。」


という、いとしい声が聞こえる。





那がただ、日常をなぞっただけなのに…



志は涙がでた。







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