鏡の中
だから彼は高校入ってからずっと地味にすごしている。
制服はちゃんと校則どおりに整える。
髪にはなんもつけないで朝シャワーを浴びて、乾かして、そのまま。
そして終いには、顔が見えないように前髪を伸ばし、顔を隠すようになった。
女は顔で見極めるんだと知ってしまった。
口から出る嘘を馬鹿みたいに信じる。
でも、だからこそその裏に気づいた。
野暮ったくしてる奴には声すらかけないってことを。
そこに彼は面白みを見出した。
人をあざけるように、彼は自然と演技力なるものを身に着けていった。