鏡の中



だから彼は高校入ってからずっと地味にすごしている。


制服はちゃんと校則どおりに整える。


髪にはなんもつけないで朝シャワーを浴びて、乾かして、そのまま。


そして終いには、顔が見えないように前髪を伸ばし、顔を隠すようになった。





女は顔で見極めるんだと知ってしまった。

口から出る嘘を馬鹿みたいに信じる。


でも、だからこそその裏に気づいた。
野暮ったくしてる奴には声すらかけないってことを。


そこに彼は面白みを見出した。




人をあざけるように、彼は自然と演技力なるものを身に着けていった。




< 2 / 142 >

この作品をシェア

pagetop