鏡の中
転換
目が覚めると、見慣れた光景。
那と繋がった後にみた自分の部屋は、自分の部屋以外の何ものでもなかった。
そう、彼は18、19歳の記憶をなくした。
20歳からの記憶が今の彼のすべてだった。
18歳以前の記憶はもちろんある。
遊んでいた事実だって覚えているし、自分の出生がどこなのかもわかる。
でもどうして、親元を離れて一人暮らしをはじめたのか、どうして自分が通っている大学に進学したのか、そしてどうして那と付き合っているのかは思い出せなかった。
だから志は那が起きないしばらくの間、カレンダーを見たり、アルバムを探したり、携帯のメモリーを見てうんうんと自分の記憶の片隅をつついて考えていた。
「んー…眠い」
ふっと目を覚ました那はベッドで大きく伸びをしてから、むくっと起き上がった。