鏡の中
未来の日常
その日、彼女は俺の部屋に泊まっていった。
もう彼女の最低限必要な私物はそろっていたから、不自由することもない。
朝、目が覚めると、そこに彼女がいた。
そして、彼女は起きるときまって俺をゆっきーと呼ぶ。
…切なそうな目をして。
でも彼女の笑顔は屈託なく、朝日に負けないほどきらきらしていて、それでいて夜の月のような艶やかさも持ち合わせている。
そうやって朝を迎えると、俺の毎日がこうして始まればいいのに、とは願わずにいられないんだ。
キスがしたくなり、耳元で愛を囁きたくなる。
抱きしめたくなる。
抱きしめてほしくなる。
その笑顔で名前を呼んでほしい。愛の言葉がほしい。
俺ってば貪欲だ。
ひとり自嘲笑いをかみ殺した。