鏡の中
一人でぼーっとカレンダーを眺めていた。
すると、志の部屋のドアをノックする音が聞こえる。
志の部屋なんだから、那は応答しなくてもいいはずだ。
でもこのノックは、志に対してではなく、今部屋にいる人間に向けられたものだった。
「ここにいたんだな、那。」
ドアをあけるとそこには、不敵な笑顔の男が突っ立っていた。
部屋には入らないで、という那を制して男は無理やり押し入った。
「お前抵抗したらわかってんだろうな。何もかもちゃらだぜ?」
「…っ…」
何も言えなくなってしまい、涙を流す那の頬に男は触れた。
「わかればいいんだよ。」
深く深く口づけをした。