鏡の中
階段を下り終えて、誰も来ないようなひっそりとした踊り場に出ると、京平はいきなり那を抱き寄せた。
「何も言わずに付き合って欲しい。」
「…」
「今那ちゃんに好きなやつがいたってかまわねー。俺が那ちゃんを幸せにしてやる!」
那は何も考えられなかった。…京平のことなんて。
周りの目が怖い、ただそれだけだった。
「でも…その…」
「今すぐにとは言わない。俺のことを知れ!それから7月の行事で、もう一度告白するから!」
「…」
「いきなり抱きしめて悪かった。今すぐにでも那ちゃんを自分のものにしたいって思うと、とめられなかったんだ…。」
「うん…。」
「じゃあ、行事楽しみにしてろよ!」
京平はまた那の腕を掴むと、階段を上り始めた。