鏡の中
心の中にある気持ちをずっと据えておくことなんて、できない。
流行のように移り変わるのが、気持ちである。
不易流行とはよく言ったものである。
だから、抑えようと思った気持ちや、感情が、誰かの言動ひとつで変わってしまったりというのはあり得ないことではない。
特にまだ意思を確立していなかったりする、そんな人には。
「ねえ、麻子~いいの?絶対後悔するんじゃない?うちが言うのも微妙だけどさあ~」
「だって…あんなにみんなが賛成してる場所で、一人で…しかもクラス委員の私が反対できると思うの?」
「…でも…」
「私には、無理。」
「だったら、あんな提案取り下げなよ!絶好のチャンスを与えただけじゃん!」
黙ってしまった麻子に、友達の由美は何もいえなくなってしまった。
そんなことを露知らず、張本人であるその男は、ゆっくりとそのときが来るのを待っていた。