鏡の中
前をとぼとぼと歩く女はもう…俺の彼女ではなかった。
立ち止まり、中庭のベンチに腰を下ろす。
空はぱっとしない曇り空。
ポツリポツリと那は話し始めた。
「私…京平のことも…う好きじゃない…んだ。」
だったらなんでそんなに泣くんだ?
どうして好きじゃない男の前で、そんな顔をする?
…気持ちが揺らぐ。
俺の彼女ではなくなった、こいつに…なんで…俺が…
気持ちを揺らがせなきゃならない。
「那は俺を好きじゃないんだな。わかった。いきなり態度が変わるってことは、好きな男でもできたのか?」
「…」
何も言わない那に無性に腹が立った。
その沈黙が、そうなの、と言っているようで。