晴れ、のち晴れ
「でもさあ、この前幕間遅刻してきたじゃん?」
急に変わった話の内容に、葵は慌てて後ろの生徒へ意識を戻した。
「あの、捨て猫の様子が気になったんで見に行ってました、ていう理由を聞いて、ずっと幕間のこと、頭のいいスカした奴だと思ってたけど、見直した」
梨羽の様子を見に行った日のことだろう。咄嗟の言い訳が思い付かなかった葵は、そんなようなことを口走った記憶がある。
教師は理由に少し驚いたようだが、特に咎めなく終わった。
「…本気で猫を見に行ってきたわけじゃないから」
「そうだとしてもよ、天変地異が起きても遅刻しなさそうな幕間が遅刻してきたってんで、クラス中凄い噂だったんだぜ」
人の遅刻がそんなに面白いなだろうか。葵の見るところによると、三年は毎日五、六人ほどなんらかの理由で遅れてくるのに。
「特に反応なし、か。クールだよなぁ、幕間って」
「そういうわけじゃないけど。噂になるぐらいなら別の理由を考えておくべきだったと思って」
「いや、悪くないと思うぜ、捨て猫」
「どうも」
葵はおざなりに礼を言った。