晴れ、のち晴れ

「で、幕間先生に質問。世界史ってどこが出ると思う?」

世界史の教科書と資料集が葵に差し出された。

葵はちらりと見て、自分のノートへ視線を戻す。

「暗記教科なんだから、全部覚えればいい」

「ひゃー流石だな。俺、世界史は物理と同じ日だからなんもやってねぇんだよ」

そんなことを愚痴られても困るので、葵は前を向きかける。

「頭のいい幕間先生に質問。俺の名前はなんでしょう。百歩譲って名字でもいいけど」

それを遮るように男が言った。

幕間は百歩譲られたところで分かるはずもない。

「もう五十歩譲ってくれ」

「いいぜ」

「ま行の名字だろ」

「ああ」

試験時は、出席番号順に席を移動するため、まくまのすぐ後ろは、み以降の何かだろう。や行というのは考えにくい。

「後は知らない」

が、葵に分かるのはそのぐらいである。

尋ねた本人は大袈裟にがくっと肩を落とした。

「そういう奴だよな、幕間って。俺、三宅彰文(みやけあきふみ)。幕間は特別に彰文でいーぜ」

普通で構わなかったので、三宅と記憶した。

担当の監督教師が教室にやって来たので、葵は今度は本当に前を向いた。

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