晴れ、のち晴れ

「なーんてね。ま、凡人の嫉妬って奴」

三宅はごまかすように手をひらひら振った。それから急に真面目な顔になる。

「でも、マジな話、気をつけた方がいいと思うぞ。幕間みたいな奴、知らないうちに恨みを買ってたりするから」

恨みを買うほど親しい者がいないような気がしたが、黙っておく。

頭に梨羽の顔が浮かんだが、きっと多分おそらく…恨みは買ってないはずだ。

「忠告、どうも」

律儀に頭を下げた葵に、三宅が意味深な苦笑いを返した。

言ってる意味が分かってないだろう、とでもいいたげである。

教室がまたざわめいた。

カンニングをした生徒が帰って来たらしい。

見つかった場合、全教科零点だが、試験そのものは受けさせるようだ。

教室に試験監督の教師が入って来るのと同時に、葵は世界史以外のものを頭から締め出した。


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