晴れ、のち晴れ

三宅はタクシーを捕まえると葵を押し込んで、問答無用で病院へと連れていった。

傷は想像以上に深く、三針縫うことになったらしい。

医者に怪我の理由を聞かれたが、曖昧にカッターナイフで遊んでいたと濁しておいた。




「あいつだよ。今日カンニングがばれたの」

夢香に保険証を持ってきて貰うのを待つ間、病院のロビーで三宅が缶コーヒー片手にゆっくりと話し出した。

同じクラスだったのか、という葵の驚きは呆れられそうだったので声にはしなかった。

「俺、二年の時も一緒だったから知ってるんだけど、あいつ家厳しくて。
絶対一番じゃなきゃ駄目なんだってさ」

葵の学校は定期テストはクラス順位しか出ない。葵も常に一番を求められていた。

「でも、三年になったらお前がいたわけで。それでちょっとおかしくなってたんじゃねぇの」

三宅は、前はカンニングするような奴じゃなかったし、と付け加える。


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