晴れ、のち晴れ


浅く、浅く呼吸を繰り返す。

息の仕方を忘れていくように、頭の中で一族の大人たちの声がこだました。


あなたは本家の跡取りなんだから、
こんな簡単なところで間違えるなんて、
みっともない真似をしてはいけません、
もっと上を目指しなさい、
上を、上を、うえ……。


気持ちが悪い。左手で口を押さえた。

こんな気分になるのは久しぶりである。


ふっと、脳裏に浮かぶ顔があった。

自分を見上げる少女の顔。


あぁ、そうか。
ここには梨羽がいないのだ。


だからこんなにも息苦しい。



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