晴れ、のち晴れ
「言わないから、絶対」
「そうしてくれると俺も助かるな」
どうでも良さそうな風に芳一が言い、慌ててにっと人の良さそうな笑顔を浮かべた。その笑顔には一点の曇りもなく、秘めた思いを抱いているようには見えなかった。
大人だ、漠然とあたしは思う。大人の皮をかぶった子供はたくさんいるけれど、芳一は、無い物ねだりをする子供でなないのだ。
もっと本質的に大人なのである。
「帰るなら、送ってやろうか?」
「いや、いいや。歩いて帰れるし」
「そうか。…葵や夢香と仲良くしてやってくれ。あいつらあんまり友達がいないんだ」
「こんなに金持ちなのに?」
「だからだよ。二人とも、友人に対して疑心暗鬼になってるところがあるからな」
ぎしんあんき…、難しい言葉だ。友人に対してそうなるとは、どういうことなのだろうか。
あたしは内心首を傾げた。
「特に葵をあんな風にしたのは、俺たちの責任だ…」