晴れ、のち晴れ
どこが分からないと聞かれたあたしは、全体的にと答える。
葵は自慢げに言うなよ、と言いつつ教科書の1番最初を開き、説明を始めた。
その間に夢香が飲み物を持ってくると、どこかへ行ってしまった。
几帳面な字があたしのノートに並んでいく。葵はあたしの書いた式の隣に、やり方を書き加えていった。
淡々と葵の話す声だけが部屋に響く。勉強を教えてくれるのはありがたいが、それ以外の話を一切しようとしなかった。
「お前、女の子と二人きりで部屋にいて、なんとも思わないのか」
「俺、年上のが好きだから」
あたしの素朴な質問に葵が手を動かしながら、律義に答えた。
「へぇ、甘やかすより甘やかされたい方なんだ」
少し葵の手が迷うように揺れた。
「そうかもな。でも、多分俺は自分から人を好きになったりしないから」
葵が妙に冷たい声で言った。