晴れ、のち晴れ
「…なんで?」
なんだか意外だ。モテそうなのに。
「俺は、幕間の家を継ぐために、一族の決めた誰かと結婚することが子供の頃から決められているから」
「それでも誰かを好きなったりしたことあるんだろ?」
「……昔はあったけど、今はどうでも良くなった。人に決められた人生しか与えられていないのなら、何もかも諦めていた方が楽だ。あと、そこやり方間違ってる」
静かな口調で葵は言い、あたしが解いている式をシャーペンで指差した。
あたしは葵の顔をまじまじと見つめる。
なんて寂しいことを言う奴なのだろう。まるで全てを諦めているような。
もっと楽しいことがいっぱいあるだろうに、何一つ知らないような顔をしている。