晴れ、のち晴れ
そして、今。
自分の知らないところで、梨羽に勉強を教えることになったらしい。
夢香が梨羽を送った後、そう報告したきた。
自分が是とも非とも返事をしなかったら、夢香は葵の塾の退会手続きをしようとしていた。おっとりしているように見えて、実は強引なのである。
外観に騙されてはいけない、ということを葵はこの妹によって重々知っていた。
「俺、受験生なんだけど」
「あら、この前の模試で志望校A判定だったじゃない」
「油断して落ちたらどうするんだよ」
「お父様に頼んで裏口入学すればいいじゃない。お父様、お兄様の頼み事なら喜んで叶えてくれるわよ」
「おい…」
あっさりと言い切った夢香に葵は顔をしかめた。いくらなんでも言い過ぎである。
「冗談よ」
冷ややかな口調の夢香は、そのまま踵を返して自室へと向かった。その途中で小さくつぶやく。
「落ちてしまえばいいのに。お兄様なんか」