晴れ、のち晴れ
思わぬことを聞かれ、葵は考え込んだ。あまりそういうことを考えないのである。
夢香だけでなく、誰に対しても。
「かわいい、ような気がする」
「お、ありきたりな感想、他には」
「ないよ、別に」
「ふぅん。じゃ、あたしは?」
関心があるのかないのか分からないあっさりとした声音で、梨羽が聞いた。葵は梨羽を見る。
そこら辺にいそうな女子中学生だ。特に感想はない。
「別に何も思もわねーよ」
どちらかといえば、先程から梨羽の手が止まっていることが気になった。
「へぇ、好きとか、嫌いとかも?」
「当たり前だろ」
いつまでこんなくだらないやり取りを続けるのだろうか。
「好きか嫌いのどちらか選べと言われたら」
「好きだよ」
嫌いな人間に勉強を教えるわけがない。そんなことも分からないのだろうか。
呆れる葵を更に呆れた顔の梨羽が見ていた。
「お前、本気でずれているというか、欠けているというか…」
「何の話だよ」
突然わけの分からない感想を漏らした梨羽は、葵を無視して、何やら考えこんでいる。
そういえば、いつか夢香にも似たことを言われたような気がした。