晴れ、のち晴れ

授業は相変わらずこれといって分からなかったが、黒板を書き写しておきさえすれば、葵が後で解説してくれるので、あたしはやる気なくシャーペンを走らせた。

これは、二等辺三角形さん。

あたしは最近その名を覚えた三角形を定規を使わずに書き上げる。

なかなかの出来だった。

ノートをめくると、しつこいぐらい何度も二等辺三角形という葵の文字が並んでいる。

あたしが覚えるまで、何度でも書いてくれたのだ。

だからあたしは二等辺三角形を覚えている。それだけでも、頭の禿げた数学教師より、葵の方が優秀だった。


< 52 / 119 >

この作品をシェア

pagetop