晴れ、のち晴れ
「なんか妬ける…」
真面目にノートを写すあたしに、笹木野が呟いた。
「なに?」
よく聞こえず聞き返すと、なんでもないと笹木野はごまかした。
「んだよ、水くさい奴」
あたしが笹木野の背をばしばし叩くと、笹木野はいててと声をあげた。
「そこ、何を喋ってる」
数学教師があたしたちに気付いて注意をする。
「七篠、笹木野の邪魔をするな。笹木野も七篠に構うんじゃない」
「はーい、すみませんでしたー」
クラス中の視線を感じながら、あたしは適当に謝った。
話し掛けてきたのは笹木野の方だったが、訂正するのも面倒である。
女たちがこちらを見てひそひそするのは気に食わなかったが。
ごめんと隣の笹木野が小声で言ったので、いいってことよとあたしは爽やかに答えておいた。