晴れ、のち晴れ
振り返ると息を切らした笹木野が立っていた。何か用かと思い、あたしは立ち止まる。
「はよ、どうしたんだよ」
「はよ。いや別に、七篠の姿が見えたから」
笹木野は、何か言いたげにちらりと葵を伺い、また視線をあたしに戻した。
「前に言ってた家庭教師?」
そういえば、そんな話を笹木野にしていたかもしれない。
「そう」
「じゃあ、俺はそろそろ行くから。何かあったら言えよ」
あたしと笹木野を見ていた葵が、手をひらひらと振って別れを告げる。
「…ありがと」
わざわざ葵が来てくれるなんて、ちょっと感動ものだ。もう二度とないかもしれないので、あたしは素直に礼を言った。
葵はあたしに答えるように片手をあげる。
「……行こう」
「え?」
「学校」
突然、笹木野があたしの腕を掴むと、早足で歩きだす。葵を見送ろうと思っていたあたしは、笹木野に引きづられる形で後に続いた。