晴れ、のち晴れ

やっと教室へやってきた隣の席の笹木野が、深刻そうな顔をして、あたしに話しかけてきた。

「昨日、大変だったんだってな…」

昨日…と、いうとひらひらの服を着せられたことだろうか。

確かにあれは大変だった…。

汚さないように、脱ぐのも畳むのも一苦労だった。

だけど、そんなことをなぜ笹木野が知っているのだろうか。

まさか、見られたとか。

いや、まさか。

もし、見られていたとしたらちょっと死にたい気持ちになる。

「昨日のことなんて忘れていいから、ほんと。あたしも忘れるし」

照れを隠すようにあたしが笑っても、笹木野は暗い顔のままだ。

「ちゃんと言わなきゃ駄目だろっ、松沢たちになんかされたって」


……松沢たちになんかされた?

あたしは笹木野にばれないよう首を傾げる。





…しまった。

本気で忘れていた。

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