私は裏方でいいです(仮)
〜11年前〜
「ママ!今日のご飯は何?」
「今日は詩茉の好きなオムライスよ。」
「オムライス!?やったーっ!」
当時5歳の私はどこにでもいる普通の幼稚園児だった。
「あっ!パパだ!パパがテレビに出てるよ!」
私の父、七瀬潤は当時世界的に有名なピアニストで海外にいることが多かった。
家に帰ってくるのは年に1、2回。帰ってこない年もあった。
だからテレビや雑誌で見るしかなかった。
そんな彼は私が生まれた時も日本にはおらず活動の拠点としていたオーストリアにいた。
「パパは次いつ帰って来るんだろうね
?」
「そうね、ママにもわからないわ。」
父の話をする時、母は決まって悲しそうな顔をしていた。
だから私も聞くのは抑えていた。