彼女が男装する理由
帰り道、歩きながらため息をついた。
( 今日一日散々なめにあったなぁ… )
そもそも、玲愛はなんで私に関わってきたのか…
今日のことが起きるまで、玲愛とは
なんの縁も無かったのに突然と…
( そりゃぁ…男だと思ってた人が、
本当は女だったなんて知ったら黙っては
いられないけど… )
なんで、急に関わった人にあんなこと…
とにかく、物凄く面倒なことになってきた。
そんなことを考えながら歩いていたら…
「 おい 」
背後から、いきなりその声とともに
誰かが腰に腕を回してきた。
「 …っ 」
いや…誰…痴漢…?!
私は、恐る恐る後ろを向いた。
そこには
「 …え…玲…愛…? 」
玲愛がいた。
私が女だってことを
見透かしている目で私を見ていた。
!!
「 …!この腕離してよっ…! 」
私が女だってこと知ってるんだから
普通、こんなこと…
「 ん?真琴って男でしょ?だったら、
こんなこと普通じゃん。」
私が女だってこと知ってて、
わざととぼけてる振りしてる。
なんか、嫌なのに言い返せない。
玲愛は私が言い返せないのを見て、
意地悪な笑みで見てくる。
「 …学校でも言ったけど、私が女だってこと
誰にも言わないでね… 」
「 あぁ…。誰にも言わないでおく。」
「 よかった…。ありがと… 」
「 思わず、声に出ちまったら
ごめんねー。」
「 …え?! 」
また、性格の悪そうな笑みで見てくる。
「 俺の言うこと聞くんだったら
別だけどな。」
なんで、あんたの言うこと聞かなくちゃ
いけなないの?
一瞬、そう思ったけど私の立場からして
そんなことは言えない。
あいつもそんなような事を思っている顔で
見てくる。
全て、見透かされている感じで嫌だ。
「 …分かった。いうことって何? 」
「 俺の彼女になってくれんなら、
女ってこと、黙っておく。」
………え…
思ってもいなかった言葉が玲愛の口から出た。