彼女が男装する理由
そう言った玲愛は私の返事を待っている。
玲愛は私のこと本当に見透かしているのか…
見透かしているんだったら、
デートなんかに誘うわけないと思う。
( 男装しているんだよ )
心の中で、そう強く思った。
男装してる女子をあの玲愛がデートに
誘うなんてありえない。
…きっと、何かの聞き間違えに違いない。
もし、本当に誘ってる意味で言われても、
最終的には"冗談"とか言われそう。
「 …それ…冗談でしょ…?w 」
玲愛はなんて応えるのだろうか…
「 冗談?…お前には、そう聞こえたのか。」
え…?
玲愛は私の目をその目で強く見つめてきた。
「 …… 」
「 お前を誘った俺が馬鹿だった。」
玲愛はそれだけを言うと、前に向き直って
スタスタと歩いて行ってしまった。
…さっきまでの暖かい感情は何処へ
行ってしまったのだろうか…
( 玲愛は本当に私を誘った…? )
今の"冗談"と言う、たった一つの発言で
こんなにも…
私は、私の鈍さに腹を立てた。
そして、何故か胸が痛みつけられるように
苦しくなった。
( …別に私は、玲愛に対して、
なんの感情も… )
だから、私が苦しむ理由なんてないよ。
そう言って、この苦しさを無くそうとした。
だけど、そう言い聞かせるたびに
どんどん胸が逆に苦しくなってきた。
あいつが頭から離れない。
…………………でも。
そういう感情とか、そういう風に言い聞かせる
なんて、ただの誤魔化しかな。
私が玲愛を傷つかせたのには間違いない。
( …玲愛に謝らなくちゃ… )
辺りを見回したけど、何処にも
玲愛はいなかった。
でも、あの時間からそんなに時間は
たっていないはず。
( まだ、近くにいると思う )
私は、玲愛を見つけに走り出した。