彼女が男装する理由
( …ハァ…ハァ…ッ )
玲愛は何処にいるの…。
頬に汗が流れ落ちるのがわかる。
( 何処まで行ったの…歩くの早すぎでしょ… )
私は、前しか見てなく、足元をよく見てなかった。
?!
「 っきゃ…っ! 」
…っ!男装、男の姿なのに変な声出た…っ
周りから見たら変にしか思えないでしょ…。
しかも…。
転んだ衝撃で、鞄から教科書とか全部落ちちゃったし…
これじゃぁ…時間かかって玲愛が本当に見つからなくなっちゃう。
「 …はぁ…何やってんの…私… 」
落ちてバラバラになった教科書を拾っていたら、他の教科書を誰かが拾い、まとめて差し出してくれた。
「 ん。本当に、お前ってやつは。」
「 !!、玲愛!!!!! 」
玲愛が目の前に私と目線を合わせて、しゃがんでいた。
「 玲愛探したんだよ!さっきはごめ… 」
「 お前その足… 」
え?足?
私は、自分の足を見た。
「 …あ…… 」
足首が凄く腫れ上がっていた。
玲愛の顔を見て、
「 だっ、大丈夫だよ!こんなのへっちゃらだしっ!! 」
私は、その場から立とうとした。
「 …っ、いっ…! 」
「 お前、無理して立つなよっ 」
( …あぁ…やっちゃった…。玲愛に謝ろうとしたのに逆に迷惑かけちゃってるし… )
「 とりあえず… 」
玲愛が私に手を伸ばしてくる。
え…なに…
思わず目を閉じてしまった。
…フワッ…!…
自分の体が浮き上がった感触を覚える。
目を開けると…
「 とりあえず、お前は歩けないから俺がおぶる。家どこ? 」
?!
私は、今目に映っている光景を見て焦り、
「 れ、玲愛!いいよ!そんな!自分で歩けるし、帰れるから…! 」
「 お前、今の状況分かってるのか?今くらい俺に黙って頷いてろよ。」
( …っ…やっぱり…私は、全部玲愛に見透かされてるな…玲愛の言う通りだ。)
「 …うん。…ごめんね、ありがとう。」
〜帰り道〜
さっきから、ずっと無言で歩いてるな…。
でも、そうなるのはしょうがないか…私のせいで空気悪くしちゃったし…。
「 ここか? 」
「 …あっ、そ、そうっここだよ。」
考え事をしていたらいつの間にか、家に着いてしまった。
( もう、着いちゃったのか… )
「 ここで、降ろして大丈夫か? 」
「 うんっ。大丈夫!玄関まで距離短いし。ありがとね…っ 」
「 おう。」
玲愛が今来た道に振り返って、遠ざかっていく。
「 …っ、まって!玲愛! 」
「 んー? 」
( 日曜のこと言わなくちゃ )
「 さっきは、冗談とか言ってごめんね!私…日曜のことなんだけど…っ 」
「 あぁー。大丈夫大丈夫。日曜のことはもう忘れていいよw気にしてないからw 」
ちがうよ…?
「 ううん!そうじゃなくて!私が、玲愛と行きたいっ…! 」
玲愛の目が見開いた。
…っ
「 あっ、そ、その…い、行きたい…なぁー…と。。。嫌だったらいいんだけど…! 」
「 ……………… 」
何も、返事が返ってこない…。
( やっぱり、駄目か… )
「 い、嫌かぁー!…ぁはは…だって、さっきあんなことあったし、私自分勝…… 」
「 ううん。 」
え…?
玲愛をずっと見つめた。
「 嫌じゃない…! 」
…………………っ……!
初めて見たんだ。
いつも、無愛想で憎たらしくて、意地悪ばっかしてくる彼が。
私に向かって、
その顔で、
『 無邪気に笑ったんだ 』