彼女が男装する理由
彼と初デート
「 俺、人生で一番嬉しいかも…っw 」
玲愛のあんなに笑ってる姿を
見たのは初めてだ。
「 な…っ、そんなに…別に…/// 」
玲愛の笑った姿を見たせいか、
恥ずかしくなってきた。
玲愛がそんな私を見て
” くすくす ”と笑った。
「 じゃあ、行くな 」
「 あ、分かった…!今日は、ホントにありがとう。」
玲愛がバイバイと言って帰っていく。
私は、その姿を見送ろうと
ずっと外に立っていた。
すると、玲愛が…
「 当日、男装してくんなよ 」
………?!
「 え、ちょ…まっ、 」
「 じゃあ、日曜日なー 」
玲愛は、私の返事を聞きもしないで
帰って行ってしまう。
私は、その場で数分立ち尽くした。
……自分の姿が嫌だから、性別を
隠して男装までしてるのに…
今更、” 自分 ”を見せたくない。
また………
中学時代と同じような事に
なるに決まってる。
……でも、玲愛だったら…
そんな事言わない…の…かな…?
私が、女だってことバラしてないし…。
( 玲愛にだったらいいかな… )
携帯を取り出した。
私は、従姉妹の綺月【はづき】に
連絡をとった。
「 あ、香奈だけど…ちょっとお願い事してもいいかな…? 」
〜デート前日〜
「 もーぅっ!ビックリしちゃったよぉ〜 」
従姉妹の綺月が私のお願い事に
物凄くビックリしたらしい。
「 あの、香奈がねぇ〜 《意味深》 」
…ぅ…っ////
「 もう!いいじゃん!やめてよ!// 」
綺月が私を見てニッコリと笑った。
「 でも、彼氏ができたなんてっ!!それで、明日はデート?!もう、最っ高じゃん!! 」
なんだか、私より綺月の方がはしゃいでる気が…
……って、
「 彼氏じゃないよ! 」
「 え?だって、付き合ってくださいって香奈から言ったんでしょ?? 」
「 ……ぁ、そ、それはそーだけど… 」
( あれは、明らかに言わされたんでしょ。しかも、脅しだよ?! )
なんて、言えるはずがない。
「 なら、彼氏じゃん!うちが、明日のデートのために、香奈を可愛くするね!任せて! 」
いつも、綺月は人一倍に協力してくれるし、頑張ってくれる。
そんな、綺月が私は好きだなぁ。
「 ありがとう…! 」
「 だって、香奈のお願い事だもん! 」
顔を見合わせて笑った。
今日一日、綺月と色んな所に行って
色んな服、色んな靴、アクセサリー……
とにかく!
明日のデートのために、綺月が
いっぱい、チョイスしてくれた。
でも、買ったものは全部、女の子らしいというか…
今までの私とは正反対なものばっかで。
こんな可愛いのが、私に似合うの、と
疑問になる点がいっぱいある。
綺月は
「 似合う……、似合い過ぎ!!香奈!男装なんかしなくていい!むしろ、しないで!! 」
と言う…。
そんな、急に言われても…と思う。
………女の子らしい服なんて私には縁のないものだと思ってた。
明日だけ、明日だけでいい。
ちゃんとした、普通の女子高校生に
なりたい。
〜デート〜
わーーー!待ち合わせ時間けっこう、
過ぎちゃってる!(汗)
私は、待ち合わせ場所に
高いヒールを履いて走っている。
昨日までの自分には、高いヒールなんて
本当に縁がなかった。
〈 朝 〉
綺月に、この後のデートのために
髪の毛をアレンジしてもらっている。
「 えぇっ、香奈って男装の時、ウィッグ使ってたんだ!凄い、自然な感じだったから分かんなかったよ! 」
いつも、男装でウィッグを使っていたから髪の毛は結構長いほうだと思う。
「 良かったw意外にバレてなかったんだ 」
「 しかも!髪の毛、長っ!!これは、あえておろしたほうがいいかも!よし! 」
私の髪型は綺月の手さばきによって、
どんどん、女の子らしい感じの髪型に
変化していく。
「 はい!できたよ! 」
鏡の中の自分を見る。
別人がいる、と思った。
頭のてっぺんにワンポイントで
あみこみがされていて、毛先が、アイロンで巻かれていた。
服は、春を感じる白が少し、くすんだ色のワンピース。
可愛さ、控え目に大人っぽさが入ったような感じ。
パステルカラーの赤いカーディガンを
はおり…
「 これ!女の子だからこそ、履く靴だよ!! 」
綺月から差し出されたものは、
高いヒールだった。
「 私…ヒール生まれて初めて履く…。嬉しい…綺月、ありがとう! 」
「 今日のデート、楽しんできな!!成功を祈ってるよ! 」
今日、初めてヒールを履いた。
自分は、女の子なんだって強く思う。
( 急がなくちゃ…っ!玲愛が待ってる )