生贄投票
早百合は驚いた。


普段ソフトボール部に所属していて、自宅に帰ってくるのが遅い娘がすでに帰宅しているようなので、部屋を覗いたら泣いていたのだ。


「どうしたの? 何があったの?」


早百合は娘を落ち着かせるために、精一杯の笑顔を作って顔を覗き込んだ。


「ぅ、ぅ、ぅ、アタシが、ぅ、ぅ、生贄に、選ばれたの」


泣きながら喋った娘の口からは、そういう風に聞き取れた。
< 126 / 827 >

この作品をシェア

pagetop