生贄投票
「もういいよお父さん。アタシが代わるから、もう寝て」


「ああ、すまんな環奈」


仁志は申し訳なさそうに謝りながら、娘にスマートホンを差し出す。


「謝ることないよ。手伝ってくれて有り難う」


環奈は無理して笑顔を作ると、父からスマートホンを受け取った。


父と母が部屋から出て行くのと入れ替わりに、弟が大欠伸をしながら入って来る。


「ごめんね孝史」


「何言ってんだよ。俺は俺の為にやるんだから、姉ちゃんが謝る必要なんてないよ」


そう言って笑う弟の言葉が、環奈にはたまらなく頼もしくて嬉しかった。
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