生贄投票
アタシは……明里が走り去った後、残されて涙を拭っている二階堂のもとに近づいた。


「あ、田野さん。どうかしたの?」


二階堂は慌ててハンカチをしまうと、無理に笑顔を作る。


そうまでして生徒に向かって笑顔を作る意味が、アタシにはまったく分からなかった。


あのときのアタシは、そんな二階堂のことを、本気でウザいと思っていたのだ。


「どうかした? 笑わせないで。仮に何かあったとしても、アンタなんかに相談するわけないじゃん」


「えっ……」


「アタシたちは誰一人として、アンタを担任だなんて認めてない。ねぇ、アンタ本当にウザいよ。お願いだからこの学校から消えて」


アタシは二階堂にそう言うと、振り返りもせずに、その場を後にした。
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