生贄投票
「今はって……どういう意味?」


「だから……今は他にはいないっていう意味だよ」


「他には? えっと……ごめん。よく分からないや」


「じゃあいいよ。それより上がっていい?」


「え、でも……あっ、いや、うん。とりあえず上がって」


意味を理解したかったけど、玄関で立ち話も確かに無粋だ。


「とりあえずソファにでも座っててよ。コーヒーでも淹れるよ」


「うん。有り難う」


リビングに通された環奈は、言われたとおりソファーに腰掛ける。


「その間これ頼むよ」


康介は笑顔で、エルゴンのスマートホンを手渡した。


「うん」


環奈は微笑んで受け取ったけど、タップはせずにテーブルの上に置いた。


これからエルゴンの交換条件を飲むつもりだから、自分がやる必要などない。


エルゴンとエッチ……。


そう思うと環奈は、死にたくなるほど辛かった。
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