生贄投票
遅いなぁ……。いくら何でも遅すぎる。


早く帰って来て代わってくれないと、さっきから欠伸が止まらない。


何度ウトウトしかけたことだろう。


でも、自分がタップの手を止めると、大好きな姉の命に関わるのだ。


一回顔を洗いに行ってこよう。孝史は姉のスマートホンを手に持ったまま、洗面所に向かった。


洗面化粧台で顔を洗い、タオルで拭っているところで、自宅の電話が鳴る。


何だか妙な胸騒ぎを覚えながら、孝史は電話に向かった。


電話のディスプレイには、知らない番号が表示されている。


といっても、家族はほとんど自分の携帯電話を使うから、固定電話には短縮ダイヤルが登録されてなく、

ほとんど誰かの電話番号を覚える習慣のない孝史は、知り合いからの電話でも、番号だけだと誰からかかって来たのかは分からないのだけれど……。
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