スクール・キラー お嬢様の秘密
立ち上がって思い切り伸びをした美弦は、海の方へ静かに歩いて行く。
海は変わらず、波を手前へ奥へ動かしていた。
まるで、手招きしているように見えた。
「―――美弦ッ!」
夕日の見え始めた、オレンジ色の空。
自分が砂を踏む音と、波の音しか聞こえない静かな空間。
切り裂くような、自分を呼ぶ声。
美弦は立ち止まり、辺りを見渡す。
だけど、誰もいない。
当たり前だ、ここに来るのを知っているのは母だけなのだから。
自分へ自殺を薦めた、最低な母だけ。
「……気のせい、か」
美弦は呟き、苦笑した。
馬鹿だな、俺も。
“彼女”の声に聞こえてしまうなんて。
大好きで、大事にしたいのに、出来ない“彼女”の声に聞こえたなんて。
「…どんだけ、未練タラタラなんだよ。
……あーあ、自分で言って、だっせぇや」
「ダサくなんてないよ、美弦は!」
すぐ隣から聞こえた“彼女”の声に、美弦は思わず尻餅をついた。
隣には、自分がずっと恋焦がれていた“彼女”が涙を流しながら立っていた。
「……未美子ちゃん……」